【 スイスの村で毎月、約29万円を支給 】
とっても素敵なニュースですね。
・スイスの映像作家がスイス・ライナウ村の住民数百人を対象としたベーシックインカム実験のために、資金を集めている。
・25歳以上の参加者は、毎月2570ドル(約29万円)を1年間受け取る。
・スイスでは2016年に行われた国民投票で、77%がベーシックインカムの導入に反対した。
2年前に行われた国民投票でスイスは、ベーシックインカムの導入を圧倒的多数で否決した。投票者の3分の2以上が毎月、無条件で市民に現金を支給するベーシックインカムに反対した。
にもかかわらず、ベーシックインカムはスイスの映像作家レベッカ・パニアン(Rebecca Panian)氏の関心を引いた。自動化によって数多くの仕事がなくなるとの懸念が広がる中、彼女は自分自身でベーシックインカム実験を行う決心をした。ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領となったことも、この決心に影響を与えたと彼女はBusiness Insiderに語った。
「以前から何かやりたいと思っていたが、勇気がなかった。『実際、何ができる? そもそも自分は何者?』という問いが頭に常に浮かんだから」とパニアン氏はメールで述べた。
「だがトランプ氏がアメリカ大統領となった時、自分に言い聞かせた。この人が大統領になれたのなら、『あのトランプ氏にできたのなら、私もベーシックインカム実験を行う村を探すことができる』と」
パニアン氏はライナウ(Rheinau)村を実験の場に選んだ。参加者は25歳以上なら就業状況にかかわらず、2500フラン(約29万円)を1年間、毎月はじめに受け取る。22~25歳は1875フラン(約22万円)、それ以下の年齢の成人と子どもへの支給額はさらに小さくなる。
実験に興味を示した約100カ所の町の中からライナウ村が選ばれたが、実験には村の住民の少なくとも半数の同意が必要だった。
ライナウ村の住民1300人のうち、約880人が実験に同意した。給与がベーシックインカムの支給額を上回る参加者は、毎月末にベーシックインカムを返金しなければならない。パニアン氏は、こうした住民は実験を金銭的に支えてくれることになると語った。
「実際、ベーシックインカムはある種のお金の再配分によって資金が担保されなければならない」とパニアン氏はメールに記した。
「皆に必要以上のお金を支給すると、より多くの資金が必要になり、インフレ状態となってしまう。そしてベーシックインカムの考え方が意味をなさなくなる。なぜならベーシックインカムの金額の多寡が人々の生活を保証するわけではないから」
住民の反応を見て、実験の前にどのくらいの資金を調達する必要があるかを決める。パニアン氏は、クラウドファンディングを10月半ばに始める予定と語った。
国民投票で否決されたスイスのベーシックインカム実験の資金には、税金があてられる予定だったが、ライナウ村の実験は民間の資金で賄われる。
パニアン氏はクラウドファンディングでの資金調達に成功すれば、ドキュメンタリーを撮影し、社会学者、経済学者、メディア言語学者と協力して結果を分析する計画とザ・ローカルは報じた。
スイスは世界で最も豊かな国の1つ、パニアン氏は実験では失業や貧困の問題に焦点を当てたくないと語った。そうではなく、ベーシックインカムがコミュニティーに与える影響に焦点を当てる。
この実験の他にも、世界中でベーシックインカム実験が増えている。アメリカでは、ミシシッピ州ジャクソンで低所得の黒人女性に焦点を当てた実験が行われる。15人のシングルマザーに毎月1000ドル(約11万円)が支給される。
カリフォルニア州ストックトンでは、2019年2月から18カ月間、100人に毎月500ドル(約5万5000円)を支給する実験が始まる。
これ以外の最近のベーシックインカム実験は、さほど順調ではない。
Yコンビネータ(Y Combinator)は、カリフォルニア州オークランドでの先行実験の後に行う予定だった実験を2019年に延期した。計画よりも時間がかかっている。
カナダ・オンタリオ州政府は、3年間の予定で4000人が参加している実験を中止する。オンタリオ州首相はベーシックインカム実験は続けると約束したが、支給は予定よりも1年早い2019年3月に打ち切られる。
ヨーロッパではフィンランドでの良く知られた2年の実験が、対象が失業者以外にも広げられることに興味が集まっていたにもかかわらず、数カ月で終了した。
世界は動いていますね。
レベッカ・パニアン(Rebecca Panian)さん
スイスのフリーランス映画監督